私たちは、この現実世界のありのままを見ていない。認知科学者 ドナルド・ホッフマン


認知科学者のドナルド・ホッフマンのTEDでの講演をご紹介します。

彼の研究分野でもある、脳と現実の関係性についての内容です。 その内容は、「この現実世界のありのままを、私たちは見ていない」というとても面白い話です。

このブログでは、認識のクセについて話をしています。

この認識のクセの観点から見ても、私たちが見ている世界は、「部分」「違い」「過去」「有限化」の条件の中でしか、見ていないことをお伝えしてきました。 ありのままの現実は見ていないということになります。

彼の研究で面白いのは、ある三つの異なる条件を持った生物を設定し、あらゆる環境においての「生存シュミレーション」を行っていることです。 その条件とは、「現実を全て見ることが出来る」「現実の一部だけが見える」「現実が全く見えず、適応だけが可能」の三つの生物です。 その結果、「現実をすべて見ることができる生物」は、なんと絶滅するという結果が、どの環境でも生まれてしまうということです。

もう一つ。

講演の最後に、現実と脳は相互作用しているが、その世界は別物だと言っています。 脳が構築する世界は、脳が勝手に創り出している世界だと。 じゃぁ、現実とはなんでしょうか?

続きは、映像をご覧ください。

〈講演内容より抜粋〉

我々は現実をあるがままに 見ているのでしょうか?

眼を開いて、1メートル先に赤いトマトがあることを認識します。 その結果、私は、現実に1メートル先に赤いトマトが あるのだと信じることになります。

そこから、 目を閉じると、私の意識は 灰色の世界へと変わります。

それでも、現実には、1メートル先に赤いトマトがあるのだと思うのなら、もしかしたら、知覚の解釈が間違っているかもしれません。

ガリレオは、我々が認識したことを、捻じ曲げて解釈しているのではないかと、疑いました。 彼はこう書き残しています。

「味、臭いや色といったものは、我々の意識の中にあるものだと思う。だから、生物がいなくなったら、こういった性質は全て消失するだろう」

神経科学者は、我々が目にする、形、物体、色や動きといったものを、リアルタイムに脳で創造していくのだと考えています。

我々は、まるで写真を撮るように、ありのままを受け取っていると思っていますが、実際には、見たものを頭の中で、構築していると思っているわけです。

そして同時に、全てを構築しているわけではありません。その時に必要なものだけを構築します。

私の研究室では、何十万回という進化のゲーム・シミュレーションを行いました。

そこでは多数の異なった世界が、ランダムに選ばれ、生物が生きるための資源を求めて競争するのです。

ある種の生物は、「現実を全て見ることが出来」て、またあるものは、「現実の一部だけが見え」、別のあるものは「現実が全く見えず」、適応だけが可能です。 どれが勝利するのでしょうか?

答えは、現実を認識するものが滅びます。

殆ど全てのシミュレーションで、現実を全く見ることなく、ただ適応していくものだけが、現実をあるがままに見る生物を、絶滅に追いやるのです。

最低限言えることは、進化は縦断的な、もしくは正確な知覚を求めていないのです。 現実を知覚することは絶滅へと導きます。

現実をあるがままに知覚することが なぜ有益ではないのでしょうか?

幸いにも とても参考になるたとえがあります。

パソコンのデスクトップのインターフェイスを見てみましょう。 あなたが原稿を書いているTEDトークを保存する青いアイコンについて考えましょう。

アイコンは青い色をした長方形で、デスクトップの右下の角にあります。

では、このアイコンはテキストファイルそのものでしょうか? テキスト・ファイルが青く、長方形であり、パソコンの右下の角にあることを意味しているのでしょうか?

もちろん違います。

そうなの?と考える人は、インターフェースの役割を誤解しています。 パソコンの実際のデータは、そこにはありません。

実際は隠されています。

ダイオードや抵抗器、それに、ソフトの全データについて、知る必要はありません。 そんなことをしていたら、テキストを書いたり、写真を編集することは決してできないでしょう。

私はこう考えます。 進化は、我々にインターフェースを提供し、現実を隠して、適応できるような行動を導いています。 あなたが今、知覚している空間と時間は、あなたにとってのデスクトップであり、物理的に存在する物体は、デスクトップ上のアイコンにすぎません。

我々は、知覚というものは、あるがままの現実を覗く窓のようなものだと考えがちです。

しかし、現実は3次元のデスクトップのようなもので、現実の世界の複雑さを隠ぺいし、適応的な行動をとるように設計されています。

知覚する空間がデスクトップであって、物理的に存在する物体は、デスクトップ上のアイコンといった具合に。

我々は、地球が平らであると考えてきました。そう見えるからです。 地球は、宇宙における不動の中心であると考えました。そう見えるからです。 でも我々は間違っていました。

知覚は誤解されていたんです。

時空と物体は、あるがままの現実であると信じています。

我々は知覚による体験を、誤って解釈しています。 我々が目で見なくても、存在している何かがありますが、それは時空でも物理的な物体でもありません。

我々は見えていないことに対し、盲目です。

望遠用のレンズを通して眺めることにより、地球は現実の世界における不動の中心ではないことを発見しました。 また、進化論を注意深く考察することで、認識する時空と物体が、現実の真の姿でないことも分かりました。

私が赤いトマトと表現するものを知覚によって体験する時、現実との作用が起りますが、現実は赤いトマトとは全く異なるものなのです。

ここに問題を見てとることができます。

脳ないしニューロンによって知覚的な体験をするとき、現実との作用が働きますが、現実は脳やニューロンによって構築されたものではなく、脳やニューロンの構築物とは全く異なったものです。

現実は、それが何であれ、世の中の原因と結果の元となる真の存在であり、脳やニューロンの構築物ではありません。

脳とニューロンには原因を引き起こす力は無く、我々の知覚的な体験や行動そのものを引き起こしません。 脳やニューロンが構築するイメージやその方法は種(真の存在)に依存します。

〈講演抜粋終わり〉

どうでしたか?

日常とはかけ離れた世界のように感じられた方も多きかもしれません。

最後、現実とは何か?という問いには、明確な答えと呼べる結論には至っていないようですね。

もし、あなたが、彼の言う「原因と結果の元となる真の存在」、「脳が構築する世界」をもっと知りたいのであれば、こちらもぜひご覧ください。

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